茶色とグレーで日常を彩ったことを伝える言葉。 江戸時代に幕府が奢侈禁止令しゃしきんしれいを発布し、庶民に着用が許された色は「茶」「鼠」「藍」だけとなったのですが、制限のある中で豊かな色彩文化を発展させました。 日本人の色に対する繊細で秀でた感覚を表す事例のひとつです。

しかし贅沢を禁じられたことで色彩表現が豊かになったという説には疑問があります。 なぜなら植物から色を抽出すると大概が茶色とグレーとなり、鮮やかな色が染まる植物は限られているからです。

植物染料を発色させる媒染剤から考察しても鮮やか色は一般的ではなかったと推測できます。 古来、媒染に用いられてきたものは植物の灰です。効果として色の明度を上げることはできますが、劇的な発色を得られるものではありません。 土壌に含む鉄分を利用した場合は、明度が下がるため鮮やかな色を生み出すことはありません。鮮やかな色の使用禁止は上流階級目線のものであり、四十八茶百鼠という言葉は、染色技術への理解や染材料の特徴を知らない幕府への風刺の意味が込められていたのではないでしょうか。